ヒンデンブルグオーメンとは?急落サインが出たら株価暴落の危険性

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株式市場やFX取引をしている方なら、「ヒンデンブルグオーメン」という言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれません。この不思議な名前の指標が点灯すると、市場が大きく下落する可能性があるといわれています。でも、具体的にどんな指標なのか、なぜ急落のサインとされるのか、そして私たち投資家はどう対応すべきなのか。今回はそんな疑問にお答えします。

目次

ヒンデンブルグオーメンの基本知識

ヒンデンブルグオーメンとは、株価予測のためのテクニカル分析指標の一つです。この指標が点灯すると、約80%の確率で5%以上の下落が起きるといわれています。名前の由来は1937年に起きたドイツの飛行船「ヒンデンブルグ号」の爆発事故にちなんでいます。

ヒンデンブルグオーメンの由来と意味

なぜこんな物騒な名前がついたのでしょうか。それは、この指標が株価大暴落の前兆として考えられているからです。ヒンデンブルグ号の爆発事故は当時の人々に大きな衝撃を与えました。同じように、この指標が点灯すると市場に大きな衝撃が走るかもしれないという意味が込められています。

この指標を考案したのは、盲目の数学者ジム・ミーカさんです。彼は複雑な市場データを分析し、市場崩壊の前に現れるパターンを発見しました。そして、そのパターンをヒンデンブルグオーメンと名付けたのです。

ヒンデンブルグ号は当時、世界最大の飛行船として知られていました。しかし、1937年5月6日、ニュージャージー州レイクハーストに着陸しようとした際に突然炎上し、36人が命を落とす大惨事となりました。この事故は当時、ラジオで生中継されていたこともあり、世界中に衝撃を与えました。

なぜ「縁起の悪いシグナル」と呼ばれるのか

ヒンデンブルグオーメンが「縁起の悪いシグナル」と呼ばれる理由は、過去の実績にあります。このシグナルが点灯した後、実際に市場が下落するケースが多かったからです。

例えば、2008年のリーマンショック前にもヒンデンブルグオーメンが点灯していました。また、2018年から2021年の間でも、このシグナルが点灯した後、アメリカ市場では約58%、日本市場では約82%の確率で5%以上の下落が起きています。

このように、ヒンデンブルグオーメンは市場の不安定さを示す重要なサインとして、多くの投資家に警戒されているのです。特に、長期的な上昇相場の中で突然このシグナルが点灯すると、投資家たちの間に緊張が走ります。

市場の専門家の中には「ヒンデンブルグオーメンは単なる迷信だ」と一蹴する人もいますが、実際のデータを見ると、無視できない指標であることがわかります。

ヒンデンブルグオーメンの点灯条件

ヒンデンブルグオーメンが点灯するためには、いくつかの条件が同時に満たされる必要があります。これらの条件は市場の不安定さを示す重要な指標となっています。

52週高値と安値の同時発生

ヒンデンブルグオーメンの最も重要な条件の一つは、ニューヨーク証券取引所(NYSE)での52週高値更新銘柄と安値更新銘柄の数が、ともにその日の値上がり・値下がり銘柄合計数の2.2%以上になることです。

通常、市場が健全な状態であれば、上昇トレンドの時は高値更新銘柄が多く、下降トレンドの時は安値更新銘柄が多くなります。しかし、両方が同時に多いという状況は、市場が混乱していることを示しています。つまり、投資家の間で意見が大きく分かれている状態なのです。

これは、株式市場が上昇から下落に転じる前の「横ばい」状態を表していると考えられます。市場が方向性を失い、次の大きな動きの前の静けさのような状態です。まるで嵐の前の静けさのように、表面上は穏やかでも、その下では大きなエネルギーが蓄積されているのかもしれません。

市場の上昇トレンドの存在

二つ目の条件は、NYSE総合指数の値が50営業日前を上回っていることです。つまり、市場全体が上昇トレンドにあることが前提となります。

これは意外に思えるかもしれませんが、実は理にかなっています。市場が既に下降トレンドにある場合、さらなる大きな下落の可能性は低くなります。一方、上昇トレンドの中で市場の混乱が生じると、それまでの上昇が反転する可能性が高まるのです。

ヒンデンブルグオーメンは高値圏で発生しやすい指標です。つまり、市場が高値圏にあるときに点灯すると、その後の下落幅が大きくなる可能性があります。これは、高値圏では利益確定の売りが出やすく、一度下落が始まると加速しやすいためです。

マクラレン・オシレーターのマイナス値

三つ目の条件は、マクラレン・オシレーターの値がマイナスであることです。マクラレン・オシレーターとは、市場の短期的な強さを示す指標です。

この値がマイナスになるということは、市場の短期的な買い圧力が弱まっていることを意味します。つまり、市場の上昇を支えていた買いの力が弱くなっているのです。

マクラレン・オシレーターは、NYSE総合指数の上昇銘柄数から下落銘柄数を引き、その結果を19日間の移動平均で割った値です。この値がマイナスになると、短期的には下落銘柄が上昇銘柄を上回っていることを示します。

これらの条件が同時に満たされると、市場が不安定な状態にあり、大きな下落が起こる可能性が高まるとされています。ただし、これはあくまで可能性であり、必ず下落するわけではありません。

ヒンデンブルグオーメンの的中率

ヒンデンブルグオーメンは、どれくらいの確率で市場の下落を予測できるのでしょうか。過去のデータを見てみましょう。

過去の急落事例とヒンデンブルグオーメン

ヒンデンブルグオーメンの的中率については諸説ありますが、一般的には「発生すると1か月間は有効とされ、80%弱の確率で5%以上の下落が起きる」といわれています。

2018年から2021年の4年間のデータを見ると、アメリカ市場では12回点灯し、そのうち7回(約58%)で5%以上の下落が起きました。日本市場では11回点灯し、そのうち9回(約82%)で5%以上の下落が起きています。

特に注目すべきは、2020年1月28日に点灯した後、アメリカ市場では約38%、日本市場では約32%の大暴落が起きたことです。これはコロナショックと呼ばれる大暴落でした。

以下の表は、2018年から2021年のヒンデンブルグオーメン点灯時の下落率をまとめたものです。

点灯日米国の下落率日本の下落率
2018/01/30-11.37%-13.72%
2018/04/245%以上の下落なし5%以上の下落なし
2018/06/185%以上の下落なし-5.89%
2018/09/25-10.50%-14.22%
2019/05/10-5.15%-6.00%
2019/08/02-7.41%-7.85%
2019/11/145%以上の下落なし5%以上の下落なし
2020/01/28-38.40%-31.83%
2021/05/125%以上の下落なし-7.3%
2021/08/18-5.65%-11.37%
2021/09/295%以上の下落なし5%以上の下落なし
2021/11/18-7.00%-7.44%

この表からわかるように、ヒンデンブルグオーメンが点灯しても必ず大きな下落が起きるわけではありません。しかし、点灯した場合には警戒が必要であることは間違いないでしょう。

2022年に発生したヒンデンブルグオーメンの結果

2022年にもヒンデンブルグオーメンは点灯しました。この年は世界的にインフレが加速し、各国の中央銀行が金利引き上げを行った年でした。

2022年は全体的に株式市場が下落した年でした。S&P500指数は年間で約19%下落し、ナスダック総合指数は約33%下落しました。日経平均株価も年間で約9%下落しています。

2022年6月には、アメリカのインフレ率が40年ぶりの高水準を記録し、FRB(米連邦準備制度理事会)が積極的な利上げを実施しました。この時期にヒンデンブルグオーメンが点灯したことで、市場の不安定さが一層高まりました。

ヒンデンブルグオーメンは頻繁に点灯する指標ではありませんが、点灯した際の的中率は比較的高いと言えるでしょう。ただし、必ず下落するわけではないことも覚えておく必要があります。

株式市場への影響

ヒンデンブルグオーメンが点灯すると、株式市場にどのような影響があるのでしょうか。具体的な数字を見てみましょう。

点灯後の平均下落率

ヒンデンブルグオーメンが点灯した後の平均下落率は、市場や時期によって異なります。2018年から2021年のデータを見ると、点灯後に5%以上下落した場合の平均下落率は、アメリカ市場で約12%、日本市場で約13%となっています。

特に大きな下落としては、2020年1月28日の点灯後のコロナショックがあります。この時はアメリカ市場で約38%、日本市場で約32%の大暴落が起きました。

ただし、すべての点灯が大きな下落につながるわけではありません。2018年4月24日や2019年11月14日の点灯後は、5%以上の下落は起きませんでした。

下落率は、その時の経済状況や市場環境によって大きく異なります。例えば、2020年のコロナショックは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大という特殊な状況が重なったため、特に大きな下落となりました。

また、下落率は業種によっても異なります。一般的に、景気敏感株(シクリカル株)は下落率が大きく、生活必需品や公共事業などのディフェンシブ株は下落率が小さい傾向があります。

下落までの期間

ヒンデンブルグオーメンが点灯してから実際に下落が始まるまでの期間も重要です。一般的には、点灯から30営業日(約1ヶ月)以内に下落が起きるとされています。

過去のデータを見ると、点灯から下落開始までの期間はケースによって異なります。すぐに下落が始まるケースもあれば、2週間から3週間後に下落が始まるケースもあります。

以下の表は、点灯から下落開始までの平均期間をまとめたものです。

点灯年平均下落開始期間
2018年約12営業日
2019年約8営業日
2020年約5営業日
2021年約15営業日

この表からわかるように、点灯から下落開始までの期間は年によって異なりますが、概ね2週間以内に下落が始まることが多いようです。

また、短期間に複数回点灯する場合もあります。例えば、2018年7月から9月にかけては、約2ヶ月の間に複数回点灯しました。このような場合、下落のリスクがさらに高まるとされています。

投資家としては、ヒンデンブルグオーメンが点灯した後の1ヶ月間は特に注意が必要です。ただし、必ず下落するわけではないので、過度に恐れる必要はありません。

FX市場への影響

ヒンデンブルグオーメンは主に株式市場の指標ですが、FX市場にも間接的な影響を与えます。株式市場と為替市場は密接に関連しているからです。

米ドル円相場への波及効果

株式市場が大きく下落すると、投資家のリスク回避姿勢が強まり、「リスクオフ」の状態になります。このような状況では、一般的に安全資産とされる円が買われ、ドル円相場は下落(円高ドル安)する傾向があります。

例えば、2020年のコロナショック時には、株式市場の大暴落と同時に、ドル円相場も大きく下落しました。2020年1月上旬には1ドル=110円前後だったドル円相場は、3月には1ドル=102円台まで下落しました。

以下の表は、ヒンデンブルグオーメン点灯後のドル円相場の変動をまとめたものです。

点灯日点灯時ドル円1ヶ月後ドル円変動率
2018/01/30108.78円105.25円-3.2%
2018/09/25112.97円112.94円0.0%
2019/08/02106.59円106.28円-0.3%
2020/01/28109.16円102.36円-6.2%
2021/08/18109.77円111.05円+1.2%

この表からわかるように、ヒンデンブルグオーメン点灯後のドル円相場の変動は一定ではありません。2020年のコロナショック時には大きく円高になりましたが、2021年8月の点灯後は逆に円安になっています。

ただし、ヒンデンブルグオーメンによる株式市場の下落が一時的なものであれば、ドル円相場への影響も限定的になることがあります。また、相場の状況によっては、ドル高円安方向に動くこともあるため、一概には言えません。

リスク回避の動きとFX取引

株式市場が不安定になると、投資家はリスク回避のために安全資産への移行を進めることが多くなります。これがFX市場にも影響を及ぼします。

リスク回避の動きが強まると、一般的に以下のような影響がFX市場に現れます。

まず、安全通貨とされる円や米ドル、スイスフランなどが買われる傾向が強まります。特に円は、日本の低金利政策や経常黒字などを背景に、世界的な金融不安時には買われやすい通貨として知られています。

一方で、オーストラリアドルやニュージーランドドルなどのリスク通貨は売られやすくなります。これらの通貨は、比較的金利が高く、世界経済の成長に連動して上昇する傾向がありますが、リスク回避の局面では逆に弱くなります。

また、市場のボラティリティ(価格変動性)が高まることも特徴です。ヒンデンブルグオーメンが点灯した後は、相場の変動が大きくなる傾向があります。これは、投資家のリスク回避姿勢が強まり、ポジションの調整が活発になるためです。

FXトレーダーにとっては、このような市場環境の変化は重要な意味を持ちます。リスク管理をより慎重に行う必要があり、ポジションサイズの調整やストップロスの設定などに注意を払う必要があります。

さらに、クロス円取引(円を含む通貨ペア)に注目が集まることも多くなります。例えば、豪ドル/円や英ポンド/円などのペアは、リスク回避の動きを反映しやすいため、トレーダーの間で人気が高まります。

ただし、ヒンデンブルグオーメンの影響は一時的なものである可能性も高いため、長期的な相場の方向性を見極めることも重要です。短期的な変動に惑わされず、経済指標や各国の金融政策など、基本的な要因にも注目する必要があります。

ヒンデンブルグオーメンへの対処法

ヒンデンブルグオーメンが点灯した場合、投資家はどのように対応すべきでしょうか。パニックにならずに冷静に対処する方法を考えてみましょう。

投資家が取るべき行動

ヒンデンブルグオーメンが点灯したからといって、すぐにすべての投資を引き上げる必要はありません。しかし、リスク管理を見直す良い機会と捉えることができます。

まず、現在のポートフォリオを再評価することが重要です。株式の比率が高すぎる場合は、一部を債券や現金などのリスクの低い資産に移すことを検討しましょう。ただし、急激な変更は避け、徐々に調整していくのが賢明です。

次に、ディフェンシブ銘柄へのシフトを考えるのも一つの方法です。生活必需品や公共事業など、景気変動の影響を受けにくいセクターの株式を増やすことで、ポートフォリオの安定性を高めることができます。

また、ヘッジ戦略の活用も検討に値します。例えば、株価指数先物やオプションを利用して、保有株式のリスクをヘッジすることができます。ただし、これらの金融商品は複雑なため、十分な知識と経験が必要です。

分散投資の重要性も忘れてはいけません。地域や資産クラスの分散を徹底することで、一部の市場の下落による影響を最小限に抑えることができます。例えば、国内株式だけでなく、海外株式や債券、不動産投資信託(REIT)なども組み入れることで、リスクを分散させることができます。

リスク管理の重要性

投資において、リスク管理は常に重要ですが、ヒンデンブルグオーメンが点灯した際には特に意識する必要があります。

まず、ストップロスの設定を見直しましょう。各ポジションに対して適切なストップロスを設定することで、大きな損失を避けることができます。ただし、ストップロスを狭すぎる範囲に設定すると、一時的な価格変動で不要な損切りをしてしまう可能性があるので注意が必要です。

次に、ポジションサイズの調整も重要です。市場の不安定さが増している状況では、一つのポジションに対するリスク量を減らすことを検討しましょう。例えば、通常の半分のサイズでトレードするなどの対応が考えられます。

また、継続的なモニタリングも欠かせません。市場の状況を常に観察し、必要に応じて戦略を調整する必要があります。ヒンデンブルグオーメンが点灯した後も、経済指標や企業の決算情報などをチェックし、市場全体の動きを把握しましょう。

最後に、冷静な判断力を保つことが何より大切です。市場がパニック状態になると、多くの投資家が感情的な判断を下しがちです。しかし、長期的な投資計画に基づいて冷静に行動することが、最終的には良い結果につながります。

まとめ

ヒンデンブルグオーメンは、株式市場の大暴落を予測する指標として知られています。しかし、必ずしも暴落が起こるわけではなく、あくまでも警戒信号の一つとして捉えるべきです。この指標が点灯した際は、自身の投資戦略を見直し、リスク管理を徹底することが重要です。パニックに陥らず、冷静な判断を心がけましょう。市場の変動は避けられませんが、適切な準備と対応があれば、チャンスに変えることも可能です。


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