FXの両建てとは?利益を出せる?メリットや初心者におすすめできない理由を解説

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FXの両建てという言葉を聞いたことがありますか?FX取引を始めたばかりの方や、少し経験を積んだ方の中には、「損失を抑える魔法の手法」として両建てに興味を持つ方もいるでしょう。しかし、実際のところ両建ては本当に有効な手法なのでしょうか?

この記事では、FXの両建ての基本的な仕組みから、メリット・デメリット、そして実践例まで詳しく解説します。両建てが推奨されない理由や、初心者が知っておくべき注意点についても触れていきます。

目次

FXの両建てとは何か?

FXの両建てとは、同じ通貨ペアで買いポジションと売りポジションを同時に持つ取引手法です。例えば、ドル円で1万通貨の買いポジションを持ちながら、同時に1万通貨の売りポジションも持つという状態です。

通常のFX取引では、「円安になるだろう」と予想すればドル円の買いポジションだけを持ち、「円高になるだろう」と予想すれば売りポジションだけを持ちます。しかし両建ては、買いと売りの両方のポジションを同時に持つことで、相場の動きに関わらず一方のポジションでは利益が出る状態を作り出します。

片側ポジションとの大きな違いは、相場の方向性を予測する必要がないという点です。片側ポジションでは、相場予測が外れると損失が発生しますが、両建ては相場がどちらに動いても一方のポジションでは利益が出ます。ただし、もう一方のポジションでは同じ金額の損失が発生するため、全体としては損益がゼロになる傾向があります。

両建ての仕組みをわかりやすく解説

両建ての仕組みを具体的に見ていきましょう。例えば、ドル円が110円のときに1万通貨の買いポジションと1万通貨の売りポジションを同時に持ったとします。

この状態で相場が1円上昇して111円になった場合、買いポジションでは1万円の利益が出ます。一方、売りポジションでは1万円の損失が発生します。結果として、利益と損失が相殺され、全体の損益はゼロになります。

逆に相場が1円下落して109円になった場合は、買いポジションで1万円の損失、売りポジションで1万円の利益となり、やはり全体の損益はゼロです。

このように、両建ては基本的に相場の上下動による損益が相殺される仕組みになっています。では、なぜこのような取引方法があるのでしょうか。それは両建てにはいくつかのメリットがあるからです。

両建てのメリット

両建ての主なメリットは以下の表のとおりです。

メリット説明
損失拡大の一時回避相場急変時に評価損益を固定できる
つなぎ売り(売買)の活用長期と短期の異なる時間軸での取引が可能
重要イベント時のリスクヘッジ相場の急変動に備えられる

損失拡大の一時回避

すでに持っているポジションが含み損を抱えている状態で、さらに相場が不利な方向に動きそうな場合、反対ポジションを持つことで一時的に損失の拡大を防ぐことができます。

例えば、ドル円の買いポジションで含み損が出ている状況で、さらに円高が進みそうな場合、同じ量の売りポジションを持つことで、それ以上の損失拡大を防ぐことができます。相場が落ち着いたら売りポジションを決済し、再び相場の回復を待つという使い方ができます。

つなぎ売り(売買)の活用

長期的には上昇トレンドだと判断している通貨ペアでも、短期的には下落する場面があります。このような場合、長期の買いポジションはそのままに、短期の売りポジションを持つことで、短期的な下落相場からも利益を得ることができます。

これは「つなぎ売り」と呼ばれる手法で、長期と短期の異なる時間軸での取引を可能にします。相場が短期的な下落を終えて再び上昇トレンドに戻ると判断したら、売りポジションを決済して長期の買いポジションだけを持ち続けるという戦略です。

重要イベント時のリスクヘッジ

重要な経済指標の発表や中央銀行の政策発表など、相場が大きく動く可能性があるイベント前に両建てを行うことで、どちらの方向に動いても大きな損失を被るリスクを回避できます。

例えば、日銀の金融政策決定会合前にドル円の両建てを行っておけば、予想外の政策変更があって相場が急変しても、一方のポジションで損失が発生しても、もう一方のポジションで利益が出るため、大きな損失を避けられます。

両建てのデメリットとリスク

両建てには魅力的なメリットがある一方で、無視できないデメリットやリスクも存在します。

デメリット説明
スプレッドの二重負担買い・売り両方に取引コストがかかる
マイナススワップの発生金利差によって損失が膨らむ可能性がある
証拠金の拘束他の取引機会を逃す可能性がある
管理の複雑さ複数ポジションの判断が難しくなる

スプレッドの二重負担

FX取引では、通貨を売買する際に「スプレッド」と呼ばれる取引コストが発生します。両建てでは買いと売りの両方のポジションを持つため、スプレッドを二重に負担することになります。

例えば、ドル円のスプレッドが0.3銭の場合、1万通貨の両建てを行うと、買いと売りそれぞれで300円、合計600円のコストが発生します。これは長期間両建てを続けると無視できない金額になります。

マイナススワップの発生

FX取引では、ポジションを翌日に持ち越す際に「スワップポイント」と呼ばれる金利差調整が発生します。金利の高い通貨を買い、金利の低い通貨を売ると、プラスのスワップポイントを受け取れますが、逆の場合はマイナススワップが発生します。

両建てでは買いと売りの両方のポジションを持つため、一方ではプラススワップが発生しても、もう一方ではマイナススワップが発生します。通常、マイナススワップの金額はプラススワップより大きく設定されているため、両建てを長期間続けると、スワップポイントの差額分だけ損失が膨らんでいきます。

証拠金の拘束

両建てでは、FX会社の証拠金計算方式によっては、買いと売りの両方のポジションに証拠金が必要になる場合があります。これにより、他の取引に使える資金が減少し、より良い投資機会を逃してしまう可能性があります。

例えば、レバレッジ25倍で1万通貨の両建てを行う場合、最大で8,800円の証拠金が必要になります。この資金は他の通貨ペアでの取引や、より有利なタイミングでの取引に使えなくなってしまいます。

管理の複雑さ

両建てでは複数のポジションを同時に管理する必要があるため、取引の判断が複雑になります。どのタイミングで片方のポジションを決済するか、利益確定や損切りの判断が難しくなり、結果として効率的な取引ができなくなる可能性があります。

特に初心者の場合、複数のポジションの管理に慣れていないため、混乱してしまい、冷静な判断ができなくなることがあります。

両建てが推奨されない理由

FX業界では一般的に両建ては推奨されていません。その理由は主に経済的合理性の欠如と規制当局の見解にあります。

経済的合理性を欠くとされる背景

両建ては基本的に相場の上下動による損益が相殺される仕組みのため、相場変動による利益を得ることができません。それにもかかわらず、スプレッドやスワップポイントなどのコストは二重に発生するため、長期的には必ず損失が膨らんでいきます。

これは投資の基本原則である「リスクとリターンのバランス」から見ても合理的ではありません。リスクを取らなければリターンも得られないのが投資の基本ですが、両建ては相場変動リスクを取らない代わりに、リターンも得られない上にコストだけがかかる状態になります。

金融庁の見解と規制

日本の金融庁は、FX業者に対して両建て取引に関する注意喚起を行うよう指導しています。金融庁の見解では、両建ては「経済合理性を欠く取引」とされており、顧客保護の観点から問題があるとされています。

多くのFX業者は、両建て取引を制限したり、両建て取引のリスクについて明示的に説明したりすることが求められています。一部のFX業者では、システム上で両建てができないようになっている場合もあります。

両建ての具体的な取引例

両建ての具体的な使い方を見ていきましょう。ここでは実践的な例を通して、両建てがどのように機能するかを解説します。

チャートを使った実践例

ドル円の取引を例に考えてみましょう。ドル円が110円で推移しており、長期的には上昇すると予想して1万通貨の買いポジションを持ったとします。しかし、短期的には下落する可能性があると判断した場合、一時的に1万通貨の売りポジションも持つことで両建てを行います。

その後、予想通りドル円が109円まで下落した場合、売りポジションで1万円の利益が出ています。ここで売りポジションを決済して利益を確定します。その後、再び長期的な上昇トレンドに戻り、ドル円が111円まで上昇した場合、買いポジションで1万円の利益が出ます。

この例では、短期的な下落相場と長期的な上昇相場の両方から利益を得ることができました。ただし、このような理想的なシナリオは常に実現するわけではなく、相場予測が外れると両方のポジションで損失が出る可能性もあります。

上手く活用するためのポイント

両建てを上手く活用するためには、いくつかのポイントがあります。

まず、両建ては一時的な対策として使うべきであり、長期間続けるべきではありません。長期間両建てを続けると、スプレッドやスワップポイントのコストが積み重なり、確実に損失が膨らんでいきます。

次に、明確な戦略を持って両建てを行うことが重要です。「とりあえず損失を抑えたい」という消極的な理由だけで両建てを行うと、結局は判断が遅れて大きな損失につながる可能性があります。

また、両建てを行う際は、相場の転換点を見極める技術が必要です。テクニカル分析などを活用して、相場がどの方向に動きそうかを判断し、適切なタイミングで片方のポジションを決済することが重要です。

両建て時の証拠金計算方法

FX会社によって両建て時の証拠金計算方法は異なります。主な計算方式は以下の2つです。

証拠金方式説明
MAX方式建玉数量の大きい側の証拠金のみ必要
合算方式買いと売りの両方の証拠金が必要

MAX方式

MAX方式では、買いポジションと売りポジションのうち、数量が大きい方の証拠金のみが必要になります。例えば、ドル円で1万通貨の買いポジションと1万通貨の売りポジションを持っている場合、どちらか一方の証拠金のみが必要です。

この方式では、両建てによる証拠金の追加負担がないため、資金効率の面ではメリットがあります。多くの国内FX業者はこのMAX方式を採用しています。

合算方式

合算方式では、買いポジションと売りポジションの証拠金が別々に計算され、その合計額が必要になります。例えば、ドル円で1万通貨の買いポジションと1万通貨の売りポジションを持っている場合、それぞれの証拠金の合計額が必要です。

この方式では、両建てによって必要証拠金が倍増するため、資金効率が悪くなります。主に海外のFX業者や一部の国内業者がこの方式を採用しています。

FX取引を始める前に、利用するFX会社がどちらの証拠金計算方式を採用しているかを確認しておくことが重要です。特に両建てを検討している場合は、MAX方式を採用している業者の方が資金効率の面で有利になります。

初心者が両建てを使うべきか?

FX初心者が両建てを使うべきかどうかについて考えてみましょう。結論から言えば、初心者は両建てを避けた方が良いでしょう。その理由は以下の通りです。

初心者向けのリスク解説

初心者にとって、両建ては一見すると「どちらに動いても損をしない」魅力的な手法に見えますが、実際にはいくつかの重大なリスクがあります。

まず、両建ては取引コストが二重にかかるため、長期的には確実に損失が膨らみます。初心者は取引コストの影響を過小評価しがちですが、長期間の取引では無視できない金額になります。

次に、両建ては相場分析の能力を養う機会を奪います。FX取引で成功するためには、相場の方向性を予測する能力が不可欠ですが、両建てはその能力を磨く機会を逃してしまいます。

また、両建ては心理的な安心感を与えますが、それは一時的なものに過ぎません。結局は判断を先送りにするだけで、問題の根本的な解決にはなりません。

両建ての代わりになる手法

初心者が両建ての代わりに検討すべき手法はいくつかあります。

まず、適切なポジションサイズの設定です。資金に対して適切な取引量を設定することで、相場が不利に動いても耐えられる余裕を持つことができます。一般的には、1回の取引で資金の2%以上のリスクを取らないことが推奨されています。

次に、明確な損切りラインの設定です。取引を始める前に、どの価格で損切りするかを決めておくことで、大きな損失を避けることができます。損切りは投資の基本中の基本であり、プロのトレーダーも必ず実践している手法です。

また、リスク分散も重要です。複数の通貨ペアに分散投資することで、一つの通貨ペアの大きな変動による影響を抑えることができます。

これらの手法は、両建てよりも健全な取引習慣を身につけるのに役立ちます。初心者はまず、これらの基本的なリスク管理手法をマスターしてから、より複雑な戦略を検討するべきでしょう。

両建てに関する誤解

両建てについては、様々な誤解が広がっています。ここでは代表的な誤解を解説します。

「絶対負けない必勝法」という誤解

両建ては「絶対に負けない必勝法」と紹介されることがありますが、これは大きな誤解です。確かに相場の変動による損失は相殺されますが、前述のように取引コストは確実に発生します。

例えば、ドル円で1万通貨の両建てを行い、スプレッドが0.3銭の場合、ポジションを持った時点で600円のコストが発生しています。さらに、円より金利の高いドルを売る場合、毎日マイナススワップが発生します。仮に1日あたり10円のマイナススワップが発生すると、1ヶ月で300円の追加コストがかかります。

このように、両建ては「負けない」どころか、長期的には確実に損失が積み重なる取引手法なのです。

実際の取引コストの影響

両建ての実際の取引コストを具体的に見てみましょう。以下の表は、ドル円で1万通貨の両建てを1ヶ月間継続した場合のコスト試算です。

コスト項目金額(円)
スプレッドコスト(往復)600
マイナススワップ(1ヶ月)300
合計コスト900

この試算では、1ヶ月間で900円のコストが発生します。これは少額に見えるかもしれませんが、取引量が増えれば比例してコストも増加します。10万通貨の両建てなら、1ヶ月で9,000円のコストになります。

また、この試算はポジションの出し入れを1回だけと仮定していますが、実際には相場の状況に応じて複数回ポジションを調整することが多いため、スプレッドコストはさらに膨らむ可能性があります。

両建ては一時的なリスクヘッジとしては有効な場合もありますが、「コストがかからない」「必ず利益が出る」といった誤解は捨て、実際のコストを正確に理解した上で使用することが重要です。

まとめ:FXの両建ての正しい理解と活用法

FXの両建ては、同一通貨ペアの買いと売りを同時に持つ取引手法です。一時的なリスクヘッジや、異なる時間軸での取引として活用できる一方で、スプレッドの二重負担やマイナススワップの発生など、無視できないデメリットも存在します。

特に初心者は両建てを避け、適切なポジションサイズの設定や明確な損切りラインの設定など、基本的なリスク管理手法をマスターすることが先決です。

両建ては「絶対負けない必勝法」ではなく、長期的には確実にコストが積み重なる取引手法であることを理解しましょう。経験を積んだトレーダーが一時的な対策として限定的に使用するものと考えるのが適切です。

FX取引で成功するためには、相場分析の能力を磨き、自分なりの取引ルールを確立することが何よりも重要です。両建てに頼るのではなく、健全な取引習慣を身につけることを目指しましょう。

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