通貨ペアって何?FX初心者でもわかる基本のキと初心者におすすめの通貨ペアを解説!

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外国為替取引(FX)を始めようと思ったとき、まず目にするのが「USD/JPY」や「EUR/USD」といった表記です。これが「通貨ペア」と呼ばれるもので、FX取引の基本となる概念です。初めて見る方には少し複雑に感じるかもしれませんが、実はとても理にかなった仕組みなのです。

FXは異なる2つの国の通貨を交換することで利益を得る投資方法です。円高になると予想したら円を買い、ドル安になると予想したらドルを売る。そのためには、どの通貨とどの通貨を交換するのかを明確にする必要があります。それが通貨ペアの役割です。

この記事では、通貨ペアの基本から選び方、実際の取引例まで、FX初心者の方にもわかりやすく解説します。難しそうに見える通貨ペアの世界も、一つひとつ理解していけば、きっと身近に感じられるようになるでしょう。

目次

通貨ペアの基本

通貨ペアとは、簡単に言えば「2つの通貨の組み合わせ」のことです。FXでは常に2つの通貨を同時に取引します。一方の通貨を買えば、もう一方の通貨を売ることになります。

通貨ペアとは

通貨ペアは、FX取引における「銘柄」に相当するものです。株式投資でいう「トヨタ」や「ソニー」のような位置づけです。FXでは、この通貨ペアを売買することで利益を得ることを目指します。

例えば、米ドルと日本円の組み合わせは「USD/JPY」(米ドル/日本円)と表記されます。これは「1米ドルが何円で交換できるか」を示しています。USD/JPYのレートが110円であれば、1米ドルを110円で交換できるということです。

通貨ペアは常に2つの通貨で構成されています。なぜなら、FXは通貨の交換(為替)を行う取引だからです。1つの通貨を買うためには、別の通貨を売る必要があります。例えば、米ドルを買うためには、日本円やユーロなど別の通貨を売ることになります。

通貨ペアの表記方法

通貨ペアは一般的に「XXX/YYY」という形式で表記されます。スラッシュ(/)の左側と右側で意味が異なります。

左側の通貨は「基軸通貨」または「取引通貨」と呼ばれ、実際に売買する対象となる通貨です。右側の通貨は「決済通貨」と呼ばれ、取引の価値を測る基準となる通貨です。

例えば、EUR/USDであれば、ユーロが基軸通貨で、米ドルが決済通貨です。このペアを「買う」とは、「ユーロを買って米ドルを売る」ことを意味します。反対に「売る」とは、「ユーロを売って米ドルを買う」ことになります。

通貨は国際的に3文字のアルファベットで表記されます。主な通貨コードには以下のようなものがあります:

通貨記号国・通貨名通称
JPY日本円
USD米ドルドル
EURユーロユーロ
GBP英ポンドポンド
AUDオーストラリアドルオージー
NZDニュージーランドドルキウイ
CADカナダドルカナダ
CHFスイスフランスイス
ZAR南アフリカランドランド

これらの通貨コードは、最初の2文字が国コード、3文字目が通貨を表しています。例えば、「USD」は「US」がアメリカを、「D」がドルを意味しています。

基軸通貨と決済通貨の違い

基軸通貨と決済通貨の違いを理解することは、FX取引を行う上で非常に重要です。

基軸通貨(取引通貨)は、通貨ペアの左側に表示される通貨で、実際に売買する対象です。取引数量を指定する際は、この基軸通貨の単位で指定します。例えば、「USD/JPY 1万通貨」と言えば、1万米ドルの取引を意味します。

決済通貨は、通貨ペアの右側に表示される通貨で、取引の価値を測る基準となります。損益も決済通貨で計算されます。

例えば、USD/JPYの場合:

  • 基軸通貨:USD(米ドル)
  • 決済通貨:JPY(日本円)

このペアで1万通貨の取引をすると、1万米ドルを売買することになります。レートが1ドル=110円から1ドル=111円に変動した場合、1円の変動で1万円の損益が発生します(1円×1万ドル=1万円)。

一方、EUR/USDの場合:

  • 基軸通貨:EUR(ユーロ)
  • 決済通貨:USD(米ドル)

このペアで1万通貨の取引をすると、1万ユーロを売買することになります。レートが1ユーロ=1.1000ドルから1ユーロ=1.1100ドルに変動した場合、0.01ドルの変動で100ドルの損益が発生します(0.01ドル×1万ユーロ=100ドル)。

このように、通貨ペアによって基軸通貨と決済通貨が異なるため、取引量や損益の計算方法も変わってきます。初めのうちは少し複雑に感じるかもしれませんが、慣れてくると自然と理解できるようになります。

主要な通貨ペア

FX市場には数多くの通貨ペアが存在しますが、一般的には取引量や流動性に応じて「メジャー」「マイナー」「エキゾチック」の3つのカテゴリーに分類されます。

メジャー通貨ペア

メジャー通貨ペアは、世界の主要経済国の通貨と米ドル(USD)との組み合わせを指します。これらは世界中で最も活発に取引されている通貨ペアで、流動性が非常に高いのが特徴です。

主なメジャー通貨ペアには以下のようなものがあります:

通貨ペア名称
EUR/USDユーロドル
USD/JPYドル円
GBP/USDポンドドル
USD/CHFドルスイス
USD/CADドルカナダ
AUD/USDオージードル
NZD/USDキウイドル

これらの通貨ペアは取引量が多く、スプレッド(売値と買値の差)が小さいため、取引コストが低いという利点があります。また、価格変動が比較的予測しやすく、テクニカル分析が効きやすいという特徴もあります。

特に、EUR/USD(ユーロドル)は世界で最も取引量の多い通貨ペアで、1日の取引量は数兆ドルに達します。USD/JPY(ドル円)も日本の投資家にとって馴染み深い通貨ペアで、取引量が多く流動性も高いです。

マイナー通貨ペア

マイナー通貨ペアは、主要通貨同士の組み合わせですが、米ドルを含まないものを指します。これらは「クロス通貨」とも呼ばれます。

主なマイナー通貨ペアには以下のようなものがあります:

通貨ペア名称
EUR/JPYユーロ円
GBP/JPYポンド円
AUD/JPYオージー円
EUR/GBPユーロポンド
EUR/CHFユーロスイス
EUR/AUDユーロオージー
GBP/CHFポンドスイス

マイナー通貨ペアはメジャー通貨ペアに比べると取引量はやや少なめですが、それでも十分な流動性があります。特に円を含むクロス円(EUR/JPY、GBP/JPYなど)は日本の投資家に人気があります。

マイナー通貨ペアはメジャー通貨ペアよりもスプレッドがやや広く、値動きが激しい傾向があります。そのため、短期的な値動きを狙ったトレードに向いている一方で、リスクも大きくなる傾向があります。

エキゾチック通貨ペア

エキゾチック通貨ペアは、主要通貨と新興国や小国の通貨との組み合わせを指します。

主なエキゾチック通貨ペアには以下のようなものがあります:

通貨ペア名称
USD/TRYドルトルコリラ
USD/ZARドル南アフリカランド
USD/HKDドル香港ドル
EUR/TRYユーロトルコリラ
USD/SGDドルシンガポールドル
USD/CNHドル中国人民元(オフショア)

エキゾチック通貨ペアは取引量が少なく流動性が低いため、スプレッドが広く取引コストが高くなります。また、政治的・経済的なイベントに敏感に反応し、急激な値動きを見せることがあります。

例えば、トルコリラ(TRY)は政治的な不安定さや高インフレなどの影響で大きく変動することがあります。南アフリカランド(ZAR)も資源価格や政治情勢に敏感に反応します。

エキゾチック通貨ペアは高いリターンが期待できる一方で、リスクも大きいため、経験豊富なトレーダー向けと言えるでしょう。初心者の方は、まずはメジャー通貨ペアやマイナー通貨ペアから取引を始めることをおすすめします。

通貨ペアの特徴と選び方

FX取引を始める際、どの通貨ペアを選ぶかは重要な決断です。各通貨ペアにはそれぞれ特徴があり、自分の取引スタイルや目標に合ったものを選ぶことが成功への第一歩となります。

取引量の多い通貨ペア

取引量の多い通貨ペアは流動性が高く、売買がしやすいという利点があります。流動性が高いということは、大きな取引でも市場価格に大きな影響を与えることなく執行できるということです。

世界で最も取引量の多い通貨ペアは以下の通りです:

順位通貨ペア1日の取引量の割合
1EUR/USD(ユーロドル)約28%
2USD/JPY(ドル円)約17%
3GBP/USD(ポンドドル)約14%
4AUD/USD(オージードル)約7%
5USD/CHF(ドルスイス)約5%

これらの通貨ペアは「メジャー通貨ペア」と呼ばれ、スプレッドが狭く取引コストが低いという特徴があります。特にEUR/USDは世界で最も流動性の高い通貨ペアで、初心者からプロのトレーダーまで幅広く取引されています。

取引量の多い通貨ペアは、価格操作されにくく、テクニカル分析が効きやすいという利点もあります。また、これらの通貨に関する経済指標やニュースも豊富に提供されているため、ファンダメンタル分析も行いやすいでしょう。

値動きの特徴

各通貨ペアには独自の値動きの特徴があり、これを理解することで自分の取引スタイルに合った通貨ペアを選ぶことができます。

ボラティリティ(値動きの大きさ)

通貨ペアによって1日の値動きの大きさ(ボラティリティ)は異なります。一般的に以下のような特徴があります:

  • 高ボラティリティ:GBP/JPY(ポンド円)、GBP/USD(ポンドドル)、AUD/JPY(オージー円)
  • 中ボラティリティ:EUR/USD(ユーロドル)、USD/JPY(ドル円)、EUR/JPY(ユーロ円)
  • 低ボラティリティ:EUR/CHF(ユーロスイス)、USD/CHF(ドルスイス)

ボラティリティの高い通貨ペアは短期間で大きな利益を得る可能性がある一方、リスクも大きくなります。一方、ボラティリティの低い通貨ペアはリスクが低い代わりに、大きな利益を短期間で得ることは難しくなります。

トレンドの特徴

通貨ペアによってトレンド(相場の方向性)の出やすさも異なります:

  • トレンドが出やすい:EUR/USD(ユーロドル)、GBP/USD(ポンドドル)
  • レンジ相場が多い:USD/CHF(ドルスイス)、EUR/CHF(ユーロスイス)

トレンドフォロー型の取引戦略を採用している場合は、トレンドが出やすい通貨ペアを選ぶと良いでしょう。反対に、レンジ相場を狙う戦略であれば、レンジ相場が多い通貨ペアが適しています。

時間帯による特徴

通貨ペアは取引される主要市場の時間帯によっても値動きが変わります:

  • 東京時間(9:00-17:00 JST):USD/JPY、AUD/JPY、EUR/JPYなどの円絡みの通貨ペアが活発
  • ロンドン時間(17:00-25:00 JST):EUR/USD、GBP/USD、EUR/GBPなど欧州通貨が活発
  • ニューヨーク時間(21:00-5:00 JST):EUR/USD、USD/CAD、USD/JPYなど米ドル絡みの通貨ペアが活発

自分が取引できる時間帯に活発に動く通貨ペアを選ぶことで、効率的な取引が可能になります。

初心者におすすめの通貨ペア

FX初心者の方には、以下の通貨ペアがおすすめです:

USD/JPY(ドル円)

日本の投資家にとって最も馴染み深い通貨ペアです。日本の経済ニュースでもよく取り上げられるため、情報を得やすく、為替レートの動きを理解しやすいという利点があります。また、比較的ボラティリティが低めで、急激な値動きが少ないため、初心者でも取引しやすい通貨ペアと言えます。

EUR/USD(ユーロドル)

世界で最も取引量の多い通貨ペアで、流動性が非常に高く、スプレッドも狭いため取引コストが低いという特徴があります。また、テクニカル分析が効きやすく、トレンドも出やすいため、テクニカル分析を学びたい初心者にもおすすめです。

EUR/JPY(ユーロ円)

ドル円とユーロドルの特徴を併せ持つ通貨ペアで、日本の投資家にも人気があります。ドル円よりもやや値動きが大きいため、ドル円で取引に慣れてきた方の次のステップとして適しています。ユーロ圏と日本の経済指標に反応するため、経済指標の影響を学ぶ良い教材にもなります。

初心者の方は、まずこれらの通貨ペアから取引を始め、徐々に他の通貨ペアにも挑戦していくとよいでしょう。最初から多くの通貨ペアを同時に取引するのではなく、1〜2種類の通貨ペアに絞って取引することで、その特性をしっかりと理解できるようになります。

また、取引を始める際は、必ず少額から始めることをおすすめします。どんなに理論を学んでも、実際の取引で経験を積むことが最も重要です。少額であれば、万が一損失が出ても精神的ダメージが少なく、冷静に取引を続けることができます。

為替レートの見方

通貨ペアを取引する際に必ず目にするのが「為替レート」です。為替レートは通貨の交換比率を表すもので、FX取引の基本となる情報です。ここでは、為替レートの見方について詳しく解説します。

ビッドとアスクの意味

FX取引では、通常1つの通貨ペアに対して2つの価格が表示されます。これが「ビッド」と「アスク」です。

ビッド(Bid):トレーダーが通貨を売ることができる価格
アスク(Ask):トレーダーが通貨を買うことができる価格

例えば、USD/JPYのレートが以下のように表示されているとします:

ビッドアスク
110.50110.53

この場合、トレーダーは110.50円で米ドルを売ることができ、110.53円で米ドルを買うことができます。つまり、FX会社は常に「安く買って高く売る」という形で利益を得ています。

ビッドとアスクの差は「スプレッド」と呼ばれ、トレーダーにとっては取引コストとなります。上記の例では、スプレッドは0.03円(3銭)です。

スプレッドとは

スプレッドは、ビッド価格とアスク価格の差のことで、FX取引における主要なコストの一つです。スプレッドは通貨ペアや市場環境、FX会社によって異なります。

一般的に、以下のような特徴があります:

  • メジャー通貨ペア(EUR/USD、USD/JPYなど):スプレッドが狭い(取引コストが低い)
  • マイナー通貨ペア(EUR/GBP、AUD/JPYなど):スプレッドがやや広い
  • エキゾチック通貨ペア(USD/TRY、USD/ZARなど):スプレッドが広い(取引コストが高い)

また、市場の流動性が高い時間帯(ロンドン市場とニューヨーク市場の重なる時間帯など)はスプレッドが狭くなり、流動性が低い時間帯(週末や祝日前後)はスプレッドが広がる傾向があります。

スプレッドが取引コストとなる理由は、取引を開始した時点で既にスプレッド分だけマイナスからスタートするためです。例えば、USD/JPYのスプレッドが3銭の場合、1万通貨(1万ドル)を取引すると、開始時点で300円のコストが発生します(0.03円 × 1万ドル = 300円)。

そのため、短期的な取引を頻繁に行う場合は、スプレッドの狭い通貨ペアを選ぶことが重要です。一方、長期的な取引を行う場合は、スプレッドの影響は相対的に小さくなります。

レート変動の要因

為替レートは様々な要因によって変動します。主な要因には以下のようなものがあります:

経済指標

各国の経済指標は為替レートに大きな影響を与えます。特に重要な経済指標には以下のようなものがあります:

  • GDP(国内総生産):国の経済規模を示す指標
  • 雇用統計:失業率や雇用者数の変化を示す指標
  • 物価指数:インフレ率を示す指標
  • 金利政策:中央銀行の金利決定

例えば、アメリカの雇用統計が予想よりも良い結果だった場合、米ドルが買われる傾向があります。逆に、日本の経済指標が悪化すれば、円が売られる可能性があります。

金利差

各国の金利差も為替レートに大きな影響を与えます。一般的に、金利の高い国の通貨は買われる傾向があります。これは「金利差取引」や「キャリートレード」と呼ばれる投資手法の基本となる考え方です。

例えば、日本の金利が0.1%、アメリカの金利が2.0%の場合、この金利差を得るために円を売ってドルを買う投資家が増え、結果としてドル高円安の傾向が生まれます。

政治的要因

政治的な安定性や不確実性も為替レートに影響を与えます。政治的に不安定な国の通貨は売られる傾向があります。また、選挙や重要な政策決定、国際的な紛争なども為替レートを大きく動かす要因となります。

市場センチメント

市場参加者の心理状態(センチメント)も為替レートに影響を与えます。リスク選好の強い時期には、円やスイスフランなどの安全資産とされる通貨が売られ、オーストラリアドルや新興国通貨などのリスク資産が買われる傾向があります。逆に、リスク回避の強い時期には、安全資産が買われリスク資産が売られます。

これらの要因は複雑に絡み合って為替レートを形成しています。FXトレーダーは、これらの要因を分析し、将来の為替レートの方向性を予測することで利益を得ることを目指します。

通貨ペアの取引例

実際の通貨ペア取引がどのように行われるのか、具体的な例を通して見ていきましょう。ここでは、代表的な通貨ペアであるドル円、ユーロドル、クロス円の取引例を紹介します。

ドル円の取引

ドル円(USD/JPY)は、日本の投資家に最も人気のある通貨ペアの一つです。ここでは、ドル円の買いポジションと売りポジションの例を見てみましょう。

ドル円の買いポジション例

現在のドル円レートが110.00円で、今後ドル高円安になると予想したとします。そこで、1万ドル分のドル円を買いポジションで取引します。

取引内容詳細
取引通貨ペアUSD/JPY(ドル円)
取引数量1万通貨(1万ドル)
エントリーレート110.00円
取引方向買い(ドルを買って円を売る)

その後、予想通りドル高円安が進み、ドル円レートが111.00円になったとします。このタイミングでポジションを決済すると:

  • 利益 = (決済レート – エントリーレート) × 取引数量
  • 利益 = (111.00円 – 110.00円) × 1万ドル = 1万円

このように、1円の値動きで1万円の利益が出ました。

ドル円の売りポジション例

反対に、現在のドル円レートが110.00円で、今後ドル安円高になると予想したとします。そこで、1万ドル分のドル円を売りポジションで取引します。

取引内容詳細
取引通貨ペアUSD/JPY(ドル円)
取引数量1万通貨(1万ドル)
エントリーレート110.00円
取引方向売り(ドルを売って円を買う)

その後、予想通りドル安円高が進み、ドル円レートが109.00円になったとします。このタイミングでポジションを決済すると:

  • 利益 = (エントリーレート – 決済レート) × 取引数量
  • 利益 = (110.00円 – 109.00円) × 1万ドル = 1万円

このように、売りポジションでも1円の値動きで1万円の利益が出ました。

ドル円は1円の値動きで1万通貨あたり1万円の損益が発生するため、計算がしやすいという特徴があります。

ユーロドルの取引

ユーロドル(EUR/USD)は世界で最も取引量の多い通貨ペアです。ドル円とは計算方法が少し異なるので注意が必要です。

ユーロドルの買いポジション例

現在のユーロドルレートが1.1000ドルで、今後ユーロ高ドル安になると予想したとします。そこで、1万ユーロ分のユーロドルを買いポジションで取引します。

取引内容詳細
取引通貨ペアEUR/USD(ユーロドル)
取引数量1万通貨(1万ユーロ)
エントリーレート1.1000ドル
取引方向買い(ユーロを買ってドルを売る)

その後、予想通りユーロ高ドル安が進み、ユーロドルレートが1.1100ドルになったとします。このタイミングでポジションを決済すると:

  • 利益 = (決済レート – エントリーレート) × 取引数量
  • 利益 = (1.1100ドル – 1.1000ドル) × 1万ユーロ = 100ドル

このように、0.01ドル(100ポイント)の値動きで100ドルの利益が出ました。日本円に換算する場合は、このドル建ての利益に現在のドル円レートをかけます。例えば、ドル円レートが110円であれば、100ドル × 110円 = 1万1,000円の利益となります。

ユーロドルの売りポジション例

反対に、現在のユーロドルレートが1.1000ドルで、今後ユーロ安ドル高になると予想したとします。そこで、1万ユーロ分のユーロドルを売りポジションで取引します。

取引内容詳細
取引通貨ペアEUR/USD(ユーロドル)
取引数量1万通貨(1万ユーロ)
エントリーレート1.1000ドル
取引方向売り(ユーロを売ってドルを買う)

その後、予想通りユーロ安ドル高が進み、ユーロドルレートが1.0900ドルになったとします。このタイミングでポジションを決済すると:

  • 利益 = (エントリーレート – 決済レート) × 取引数量
  • 利益 = (1.1000ドル – 1.0900ドル) × 1万ユーロ = 100ドル

このように、売りポジションでも0.01ドル(100ポイント)の値動きで100ドルの利益が出ました。

ユーロドルは0.0001ドル(1ポイント)の値動きで1万通貨あたり1ドルの損益が発生します。

クロス円の取引

クロス円とは、米ドルを介さずに日本円と他の通貨を直接取引する通貨ペアのことです。代表的なクロス円には、ユーロ円(EUR/JPY)、ポンド円(GBP/JPY)、オージー円(AUD/JPY)などがあります。

ユーロ円の買いポジション例

現在のユーロ円レートが130.00円で、今後ユーロ高円安になると予想したとします。そこで、1万ユーロ分のユーロ円を買いポジションで取引します。

取引内容詳細
取引通貨ペアEUR/JPY(ユーロ円)
取引数量1万通貨(1万ユーロ)
エントリーレート130.00円
取引方向買い(ユーロを買って円を売る)

その後、予想通りユーロ高円安が進み、ユーロ円レートが131.00円になったとします。このタイミングでポジションを決済すると:

  • 利益 = (決済レート – エントリーレート) × 取引数量
  • 利益 = (131.00円 – 130.00円) × 1万ユーロ = 1万円

このように、1円の値動きで1万円の利益が出ました。

ポンド円の売りポジション例

現在のポンド円レートが150.00円で、今後ポンド安円高になると予想したとします。そこで、1万ポンド分のポンド円を売りポジションで取引します。

取引内容詳細
取引通貨ペアGBP/JPY(ポンド円)
取引数量1万通貨(1万ポンド)
エントリーレート150.00円
取引方向売り(ポンドを売って円を買う)

その後、予想通りポンド安円高が進み、ポンド円レートが149.00円になったとします。このタイミングでポジションを決済すると:

  • 利益 = (エントリーレート – 決済レート) × 取引数量
  • 利益 = (150.00円 – 149.00円) × 1万ポンド = 1万円

このように、売りポジションでも1円の値動きで1万円の利益が出ました。

クロス円は一般的にボラティリティ(値動きの大きさ)が高く、短期間で大きな値動きを見せることがあります。そのため、短期トレードに適している一方で、リスクも大きくなる傾向があります。特にポンド円は「鬼クロス」とも呼ばれ、非常に値動きが激しい通貨ペアとして知られています。

通貨ペア取引のリスクと注意点

FX取引は高い利益を得られる可能性がある一方で、大きなリスクも伴います。ここでは、通貨ペア取引における主なリスクと注意点について解説します。

レバレッジの影響

FX取引の大きな特徴の一つが「レバレッジ」です。レバレッジとは、少額の証拠金で大きな金額の取引を行うことができる仕組みです。

例えば、レバレッジ25倍の場合、10万円の証拠金で250万円分(10万円×25倍)の通貨を取引することができます。これにより、少額の資金でも大きな利益を得る可能性がありますが、同時に大きな損失を被るリスクも高まります。

レバレッジのメリット

  • 少額の資金で大きな取引ができる
  • 資金効率が良く、大きなリターンが期待できる
  • 金利差による「スワップポイント」の恩恵を大きく受けられる

レバレッジのデメリット

  • 損失も拡大する可能性がある
  • 相場の急変動で証拠金以上の損失が出ることもある(ロスカット)
  • 心理的なプレッシャーが大きくなる

日本国内のFX業者では、金融庁の規制によりレバレッジは最大25倍に制限されています。一方、海外のFX業者ではより高いレバレッジ(100倍、500倍など)を提供していることもありますが、リスクも比例して高くなります。

初心者の方は、まずは低いレバレッジ(5倍程度)から始め、取引に慣れてきたら徐々にレバレッジを上げていくことをおすすめします。また、どんなに経験を積んでも、資金管理の観点から過度に高いレバレッジでの取引は避けるべきです。

レバレッジを効果的に活用するためには、適切な資金管理とリスク管理が不可欠です。例えば、1回の取引で口座残高の2%以上のリスクを取らないというルールを設けるなど、自分なりのリスク管理ルールを確立することが重要です。

金利差の考慮

通貨ペア取引では、2つの通貨間の金利差によって発生する「スワップポイント」も重要な要素です。スワップポイントとは、2国間の金利差から生じる損益のことで、ポジションを翌日に持ち越す際に発生します。

例えば、高金利通貨を買い、低金利通貨を売るポジションを持つと、通常はプラスのスワップポイントが得られます。反対に、低金利通貨を買い、高金利通貨を売るポジションを持つと、マイナスのスワップポイントが発生します。

通貨ペア買いポジション売りポジション
AUD/JPY(豪ドル/円)プラススワップマイナススワップ
NZD/JPY(NZドル/円)プラススワップマイナススワップ
TRY/JPY(トルコリラ/円)プラススワップマイナススワップ
USD/JPY(米ドル/円)わずかなプラスわずかなマイナス
EUR/JPY(ユーロ/円)わずかなマイナスわずかなプラス

※スワップポイントは各国の金利政策により変動するため、上記は一般的な傾向です。

スワップポイントを狙った取引は「スワップ運用」や「スワップ投資」と呼ばれ、長期投資の一つの手法として人気があります。特に、日本円のような低金利通貨を売って、オーストラリアドルやニュージーランドドルのような高金利通貨を買うポジションは、プラスのスワップポイントが期待できます。

ただし、スワップポイントだけを目的とした取引には注意が必要です。為替レートの変動によって生じる損失が、スワップポイントによる利益を上回ってしまうことがあります。例えば、豪ドル/円で買いポジションを持っている場合、豪ドル安円高が進むと、スワップポイントで得た利益以上の為替差損が発生する可能性があります。

また、各国の金利政策は変更されることがあり、それに伴いスワップポイントも変動します。長期的なスワップ運用を考える場合は、各国の経済状況や中央銀行の金融政策の動向にも注目する必要があります。

経済指標発表時の注意

FX市場は経済指標の発表に敏感に反応します。重要な経済指標が発表される際には、為替レートが大きく変動することがあり、特に注意が必要です。

主な重要経済指標には以下のようなものがあります:

経済指標発表国発表頻度影響力
雇用統計(非農業部門雇用者数)アメリカ毎月非常に大
消費者物価指数(CPI)各国毎月
国内総生産(GDP)各国四半期
小売売上高各国毎月中〜大
製造業PMI各国毎月中〜大
中央銀行の金融政策発表各国定期的非常に大

これらの経済指標が発表される前後は、市場のボラティリティが高まり、急激な値動きが発生することがあります。特に、予想値と実際の発表値に大きな乖離がある場合は、相場が大きく動くことがあります。

経済指標発表時の注意点としては以下のようなものがあります:

スプレッドの拡大

経済指標発表の直前や直後は、FX会社がリスク回避のためにスプレッド(売値と買値の差)を一時的に拡大することがあります。通常よりも取引コストが高くなるため、この時間帯の取引は避けた方が良い場合もあります。

急激な値動き

重要な経済指標の発表直後は、数秒から数分の間に大きな値動きが発生することがあります。このような急激な値動きの中では、思わぬ価格でポジションが決済されることがあり、予想以上の損失が発生する可能性があります。

ストップロスの跳び越え

急激な値動きの際には、設定したストップロス(損切り注文)の価格を「跳び越えて」約定することがあります。これを「スリッページ」と呼びます。例えば、100円でストップロスを設定していても、相場が急変して99円から98円に一気に動いた場合、98円で約定することがあります。

経済指標発表時の対策としては、以下のような方法があります:

ポジションを持たない

重要な経済指標の発表前にポジションを決済しておき、発表後に落ち着いてから再度エントリーする方法です。これが最も安全な方法ですが、発表後の値動きの機会を逃す可能性もあります。

両建て

同じ通貨ペアで買いポジションと売りポジションの両方を持つ「両建て」という方法もあります。これにより、どちらの方向に動いても一方のポジションで利益が出ますが、スプレッドなどのコストが二重にかかるデメリットもあります。

ポジションサイズを小さくする

経済指標発表前にポジションサイズ(取引量)を通常よりも小さくしておくことで、リスクを軽減する方法もあります。

経済指標の発表日時は、FX会社のウェブサイトや経済カレンダーなどで事前に確認することができます。重要な経済指標の発表スケジュールを把握し、それに合わせた取引戦略を立てることが重要です。

まとめ

通貨ペアはFX取引の基本となる概念で、2つの通貨の組み合わせを表します。取引を始める際は、まずメジャー通貨ペアから始め、徐々に他の通貨ペアにも挑戦していくとよいでしょう。各通貨ペアには独自の特徴があり、自分の取引スタイルや目標に合ったものを選ぶことが大切です。

為替レートの見方やスプレッドの意味を理解し、レバレッジの影響や金利差、経済指標発表時の注意点も把握しておくことで、より効果的な取引が可能になります。FX取引には大きなリスクも伴いますが、適切な知識と経験を積むことで、リスクを管理しながら取引を行うことができるようになります。

FXの世界は奥深く、学ぶべきことは多いですが、一歩一歩着実に進んでいけば、きっと自分に合った取引スタイルが見つかるはずです。


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