株主優待は、株式投資の魅力の一つです。配当金とは別に、企業から株主に対して商品やサービスが提供される制度で、上手に活用すれば日常生活をより豊かにすることができます。
この記事では、株主優待の基本から目的別のおすすめ銘柄、選び方のポイントまで詳しく解説します。これから株主優待投資を始めたい方も、すでに投資経験がある方も、ぜひ参考にしてみてください。
株主優待とは?初心者にもわかりやすく説明します
株主優待とは、企業が自社株式を保有する株主に対して、自社製品やサービスなどを提供する制度です。日本独自の制度として発展してきました。株を持っているだけで、美味しい食品や便利な日用品、飲食店の割引券などがもらえるのですから、とても魅力的ですよね。
株主優待制度の基本的な仕組み
株主優待は、企業が定めた一定数以上の株式を保有している投資家に対して提供されます。多くの企業では100株(1単元)以上の保有が条件となっています。保有株数に応じて優待内容がグレードアップする企業も少なくありません。
例えば、100株保有なら2,000円相当の商品、300株保有なら5,000円相当の商品というように、保有株数が増えるほど優待内容が充実する仕組みです。株主優待は年に1回提供する企業が多いですが、中には年2回以上提供する企業もあります。
株主優待と配当金の違い
株主優待と配当金は、どちらも株主に対する還元策ですが、性質が異なります。配当金は企業の利益から株主に現金で分配されるもので、保有株数に応じて比例的に増加します。一方、株主優待は現金ではなく、商品やサービスとして提供されることが特徴です。
また、配当金には約20%の税金(所得税15%、住民税5%)がかかりますが、株主優待には原則として税金がかかりません。ただし、優待として現金や商品券などの換金性の高いものを受け取った場合は、一時所得として課税対象になる可能性があるので注意が必要です。
権利確定日と権利付最終売買日の重要性
株主優待を受け取るためには、「権利確定日」に株主名簿に名前が記載されている必要があります。多くの企業では、3月末と9月末を権利確定日としています。
実際に株を購入する際に重要なのが「権利付最終売買日」です。これは権利確定日の3営業日前にあたります。この日までに株を購入すれば、その権利確定日の株主優待を受け取ることができます。逆に、権利付最終売買日の翌日(権利落ち日)以降に購入した場合、次回の権利確定日まで優待を受け取ることはできません。
例えば、3月末が権利確定日の場合、3月の最終営業日の3営業日前までに購入する必要があります。この日程を逃すと、半年後や1年後まで待つことになるので、カレンダーをしっかりチェックしておきましょう。
目的別!おすすめの株主優待銘柄
株主優待は様々な形で提供されます。ここでは目的別に、特におすすめの優待銘柄をご紹介します。
食品・飲料がもらえる優待銘柄
食品・飲料の優待は、日常生活で確実に使える人気の優待です。特に高級品や普段なかなか買わないような商品がもらえると嬉しいですよね。
山崎製パン(2212)は、100株保有で1,000円相当の自社製品詰め合わせがもらえます。菓子パンからデニッシュ、食パンまで幅広い商品が届くので、朝食やおやつに重宝します。
キッコーマン(2801)は、100株以上保有で1,000円相当の自社商品が贈られます。醤油だけでなく、調味料や飲料など多彩な商品から選べるのが魅力です。
ハウス食品グループ本社(2810)は、100株以上で3,000円相当の自社製品詰め合わせがもらえます。カレールウやスパイス、レトルト食品など、食卓に役立つ商品が揃います。
日用品・生活用品がもらえる優待銘柄
日用品や生活用品の優待も、実用性が高く人気があります。毎日使うものだからこそ、優待でもらえると家計の助けになります。
花王(4452)は、100株以上保有で3,000円相当の自社製品詰め合わせがもらえます。シャンプーや洗剤、化粧品など、高品質な日用品が届きます。
ライオン(4912)は、100株以上で1,000円相当、1,000株以上で3,000円相当の自社製品がもらえます。歯磨き粉や洗剤など、日常的に使う商品が中心です。
小林製薬(4967)は、100株以上で1,000円相当の自社製品詰め合わせがもらえます。健康食品や医薬品、日用品など、バラエティ豊かな商品が特徴です。
飲食店で使える優待券がもらえる銘柄
外食好きの方には、飲食店で使える優待券がおすすめです。普段よりもお得に食事を楽しむことができます。
すかいらーくホールディングス(3197)は、100株以上保有で年2回、合計6,000円分の優待券がもらえます。ガスト、バーミヤン、ジョナサンなど、グループ全店で使用可能です。
王将フードサービス(9936)は、100株以上で3,000円分の優待券がもらえます。餃子の王将で使えるので、餃子好きにはたまらない優待です。
吉野家ホールディングス(9861)は、100株以上で3,000円分の優待券がもらえます。吉野家だけでなく、はなまるうどんやケンタッキーフライドチキンでも使えるのが魅力です。
買い物割引が受けられる優待銘柄
小売業の優待は、買い物割引や優待券の形で提供されることが多く、日常の買い物がお得になります。
イオン(8267)は、100株以上保有で年2回、100株につき100円分の優待券がもらえます。また、イオングループの店舗で買い物すると、毎月20日・30日にお買い物代金が5%割引になる「株主さまデー」も利用できます。
ヤマダホールディングス(9831)は、100株以上で最大3%の買い物割引が受けられます。家電製品は高額なので、割引の恩恵が大きいのが特徴です。
ニトリホールディングス(9843)は、100株以上で10%の買い物割引が受けられます。家具や寝具、インテリア小物など、幅広い商品が対象です。
デジタルギフトがもらえる最新優待銘柄
最近増えているのが、デジタルギフトや電子マネーなどの優待です。受け取りや利用が簡単で、若い世代にも人気があります。
GMOインターネットグループ(9449)は、100株以上保有でQUOカードPay1,000円分がもらえます。スマートフォンで簡単に利用できるのが魅力です。
ソフトバンクグループ(9984)は、100株以上で年2回、合計2,000円相当のPayPayポイントがもらえます。オンラインショッピングや実店舗での支払いに利用できます。
楽天グループ(4755)は、100株以上で年1回、1,000ポイントの楽天ポイントがもらえます。楽天市場での買い物やサービス利用に活用できます。
2025年注目の株主優待銘柄ランキング
2025年に特に注目したい株主優待銘柄をランキング形式でご紹介します。
高利回りでおすすめの優待銘柄TOP5
優待利回りとは、株価に対する優待の価値の割合を表したものです。高い優待利回りの銘柄は、投資効率が良いと言えます。
順位 | 銘柄名 | 証券コード | 優待内容 | 優待利回り |
---|---|---|---|---|
1位 | 日本マクドナルドHD | 2702 | 株主優待カード(年間6万円まで20%割引) | 約7.5% |
2位 | 大庄 | 9979 | 飲食代金20%割引券(年間利用上限なし) | 約7.0% |
3位 | 吉野家HD | 9861 | 3,000円分の優待券 | 約6.5% |
4位 | サガミHD | 9900 | 優待食事券(6,000円相当) | 約6.0% |
5位 | コシダカHD | 2157 | カラオケまねきねこ優待券(10,000円相当) | 約5.5% |
少額投資でもらえるお得な優待銘柄
少ない資金でも優待が受けられる銘柄は、投資初心者にもおすすめです。
銘柄名 | 証券コード | 必要株数 | 株価(2025年4月現在) | 投資金額 | 優待内容 |
---|---|---|---|---|---|
タマホーム | 1419 | 100株 | 約1,500円 | 約15万円 | QUOカード2,000円分 |
日本製麻 | 3306 | 100株 | 約300円 | 約3万円 | 自社製品(リネン製品など) |
丸大食品 | 2288 | 100株 | 約1,800円 | 約18万円 | 自社製品詰め合わせ3,000円相当 |
日本駐車場開発 | 2353 | 100株 | 約200円 | 約2万円 | 全国スキー場リフト割引券 |
焼肉きんぐ | 3097 | 100株 | 約2,000円 | 約20万円 | 3,000円分の食事券 |
長期保有で特典が増える優待銘柄
長期保有を奨励するために、保有期間に応じて優待内容がアップする企業も増えています。
アサヒグループホールディングス(2502)は、3年以上保有すると、通常の優待に加えて限定商品がもらえます。
オリックス(8591)は、1年以上保有で通常の優待に加えて1,000円相当のカタログギフトがもらえます。さらに3年以上になると3,000円相当にアップします。
伊藤園(2593)は、1年以上保有すると優待商品が1.5倍、3年以上で2倍になります。お茶好きの方には嬉しい優待です。
月別!権利確定月からみる株主優待カレンダー
株主優待投資では、権利確定月を把握して計画的に投資することが重要です。ここでは、主要な権利確定月の優待銘柄をご紹介します。
3月権利確定の人気優待銘柄
3月は最も権利確定銘柄が多い月です。多くの企業の決算期と重なるためです。
キユーピー(2809)は、11月30日と5月31日の年2回権利確定日があり、100株以上保有で1,000円相当の自社製品がもらえます。マヨネーズやドレッシングなど、日常的に使う調味料が中心です。
エイチ・アイ・エス(9603)は、100株以上保有で旅行割引券や優待券がもらえます。旅行好きの方には魅力的な優待です。
日本航空(9201)は、100株以上保有で国内線の割引券がもらえます。旅行の機会が多い方にはおすすめです。
9月権利確定のおすすめ優待銘柄
9月も3月に次いで権利確定銘柄が多い月です。
ユニーファミリーマートホールディングス(8028)は、100株以上保有で500円分のお買物券がもらえます。全国のファミリーマートで使えるので便利です。
リンガーハット(8200)は、100株以上保有で3,000円分の食事券がもらえます。長崎ちゃんぽんや皿うどんが好きな方におすすめです。
サンリオ(8136)は、100株以上保有でサンリオピューロランドのフリーパスや商品割引券がもらえます。お子さんやキャラクター好きの方に人気です。
その他の月の注目優待銘柄
6月や12月など、その他の月にも魅力的な優待銘柄があります。
ミニストップ(9946)は、2月末権利確定で、100株以上保有で500円分の優待券がもらえます。ソフトクリームが好きな方におすすめです。
ドトール・日レスホールディングス(3087)は、2月末権利確定で、100株以上保有で2,500円分の優待券がもらえます。ドトールコーヒーやエクセルシオールカフェで使えます。
コメダホールディングス(3543)は、2月末権利確定で、100株以上保有で3,000円分の優待券がもらえます。コメダ珈琲店でのコーヒーや名物シロノワールを楽しめます。
株主優待銘柄を選ぶときのポイント
株主優待銘柄を選ぶ際には、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。
優待内容の充実度をチェックする方法
優待内容の充実度は、単純な金額だけでなく、自分にとっての有用性も考慮する必要があります。例えば、自分が普段から利用する店舗やサービスの優待なら、実質的な価値は高くなります。
また、優待の選択肢が多い企業も魅力的です。例えば、日本ハム(2282)では、自社製品の詰め合わせか、社会貢献活動への寄付か選べるようになっています。自分のライフスタイルに合わせて選べる柔軟性は大きなメリットです。
優待情報を調べる際は、企業のIRサイトや株主優待専門のウェブサイトを活用するとよいでしょう。最新の情報を確認することで、優待内容の変更や廃止を見逃さないようにしましょう。
株価と優待のバランスを見極める
優待内容が魅力的でも、株価が高すぎると投資効率が悪くなります。そこで重要になるのが「優待利回り」の考え方です。
優待利回り(%)= 優待の価値 ÷ 投資金額(株価×株数)× 100
例えば、1株1,000円の株を100株(10万円)購入して、5,000円相当の優待がもらえる場合、優待利回りは5%となります。一般的に、優待利回りが3%以上あれば魅力的と言われています。
ただし、優待の価値は主観的な面もあるため、自分にとっての実質的な価値を考慮することも大切です。例えば、普段利用しない店舗の割引券よりも、日常的に使う商品の方が価値が高いと言えるでしょう。
企業の業績・財務状況も忘れずに
優待銘柄を選ぶ際には、企業の業績や財務状況も重要なポイントです。業績が安定している企業は、優待を継続的に提供できる可能性が高いです。逆に、業績が悪化している企業は、優待の改悪や廃止のリスクが高まります。
財務諸表をチェックする際は、売上高や純利益の推移、自己資本比率などに注目しましょう。特に自己資本比率が40%以上あれば財務的に安定していると言われています。また、配当性向も重要な指標です。配当性向が高すぎる企業は、将来的に配当や優待を削減する可能性があります。
株主優待は投資判断の一要素に過ぎないことを忘れないでください。長期的な視点で見れば、企業の成長性や収益力の方が重要です。優待目当てだけで株を購入すると、株価下落のリスクを負うことになります。
優待利回りの計算方法
優待利回りは、投資金額に対する優待の価値の割合を表します。計算方法は以下の通りです。
優待利回り(%)= 優待の価値 ÷ 投資金額(株価×株数)× 100
例えば、株価が2,000円の銘柄を100株(20万円)購入して、年間6,000円相当の優待がもらえる場合、優待利回りは3%となります。
優待と配当を合わせた「総合利回り」も重要な指標です。
総合利回り(%)= (優待の価値 + 配当金額)÷ 投資金額 × 100
例えば、上記の例で年間配当が1株40円(100株で4,000円)の場合、総合利回りは(6,000円 + 4,000円)÷ 200,000円 × 100 = 5%となります。
一般的に、総合利回りが5%以上あれば魅力的な投資先と言えるでしょう。ただし、優待の価値は主観的な面もあるため、自分にとっての実質的な価値を考慮することも大切です。
株主優待投資の注意点
株主優待投資には魅力がある一方で、いくつかの注意点もあります。失敗しないために、以下のポイントを押さえておきましょう。
優待目当ての「株主優待クロス取引」とは
「株主優待クロス取引」とは、権利確定日だけ株を保有して優待を獲得し、すぐに売却する投資手法です。具体的には、権利付最終売買日に株を購入し、権利落ち日に売却します。
この方法のメリットは、短期間の投資で優待が獲得できることです。しかし、以下のようなデメリットもあります。
まず、権利落ち日には株価が下落することが多いため、売却時に損失が発生する可能性があります。この下落幅は、優待の価値に相当することが多いです。
また、売買手数料がかかるため、少額投資では手数料が優待の価値を上回ってしまうこともあります。さらに、短期売買による利益には税金(申告分離課税)がかかります。
優待クロス取引は、これらのコストを考慮した上で、それでも利益が出る場合に検討する価値があります。ただし、投機的な側面が強いため、初心者には向いていない投資手法と言えるでしょう。
優待の改悪・廃止リスクについて
株主優待は企業の任意の制度であり、いつでも内容の変更や廃止が可能です。実際に、業績悪化や経営方針の変更により、優待を縮小したり廃止したりする企業は少なくありません。
特に、以下のような企業は優待の改悪・廃止リスクが高いと考えられます。
業績が悪化している企業は、コスト削減のために優待を見直す可能性があります。また、株主構成が変化した企業、特に外国人投資家の比率が高まった企業は、日本独自の制度である株主優待よりも配当を重視する傾向があります。
さらに、近年はESG投資の観点から、優待にかかるコストや環境負荷を見直す企業も増えています。例えば、紙の優待券からデジタル優待へ移行する企業が増えているのはその一例です。
優待の改悪・廃止リスクを減らすためには、業績が安定している企業や、長年にわたって優待を継続している企業を選ぶことが重要です。
税金や手数料も考慮した投資判断を
株主優待投資を行う際は、税金や手数料も考慮する必要があります。株式の売買には証券会社の手数料がかかります。ネット証券では比較的安いですが、それでも無視できない金額です。
また、株式投資で得た利益(譲渡益)や配当金には約20%の税金(所得税15%、住民税5%)がかかります。一方、株主優待自体には原則として税金はかかりませんが、換金性の高い商品券などは一時所得として課税される可能性があります。
さらに、株式を保有するだけでも、配当金や株式の譲渡益に対する税金の申告が必要になる場合があります。特に、複数の証券会社を利用している場合は、確定申告が必要になることが多いです。
これらのコストを考慮した上で、総合的に投資判断を行うことが重要です。単に優待の価値だけで判断するのではなく、税引き後の実質的なリターンを計算しましょう。
まとめ:自分に合った株主優待銘柄を見つけよう
株主優待は、配当金とは別に企業から株主に提供される特典で、上手に活用すれば日常生活をより豊かにすることができます。食品や日用品、飲食店の優待券など、様々な形で提供されるため、自分のライフスタイルに合った優待銘柄を選ぶことが大切です。
優待銘柄を選ぶ際は、優待内容の充実度、株価とのバランス、企業の業績・財務状況などを総合的に判断しましょう。また、優待利回りや総合利回りを計算して、投資効率の良い銘柄を見つけることも重要です。
株主優待投資には、優待の改悪・廃止リスクや税金・手数料の問題など、いくつかの注意点もあります。これらのリスクを理解した上で、長期的な視点で投資を行うことが成功の鍵です。
自分に合った株主優待銘柄を見つけて、楽しみながら資産形成を進めていきましょう。
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